地方に根付く文化を紡ぐ!
 

篠山城下町ホテルNipponia マネージャー(バリューマネジメント株式会社 店舗統括部マネージャー) 
平松 隆雄さん    ひらまつ たかおさん

神戸市出身。フランス料理を好み、23歳から約17年間、レストラン、カフェ、ホテルといった施設で勤務。ソムリエ資格も取得済み。2015年10月より現職に至る。

まずはじめに、御社(バリューマネジメント(株))について教えてください。

弊社は、「日本の文化を紡ぐ」をテーマに掲げ、歴史的建造物に特化し、宿泊施設、レストラン、結婚式場として利活用する事業を展開しています。今は使われなくなった歴史的建造物の中にユニークな価値を見出し、その場所を宿泊施設やレストラン、結婚式場などの場所として蘇らせることで、その施設の収益化や地域活性化につなげ、後世に残し受け継がれることを可能にします。

このニッポニア事業では、各地に点在して残されている古民家を、その歴史性を尊重しながら客室や飲食店、または店舗としてリノベーションを行い、その土地の文化や歴史を実感できる複合宿泊施設として再生していくという一般社団法人NOTE様の事業コンセプト(プロジェクト)に賛同し、実際に運営するオペレーション担当として参画させていただいております。

城下町ホテルとありますが、それはどういったものなんでしょうか?

一般的に、地域としては、やはり東京や大阪、京都が注目されがちです。しかし、地方にこそ文化というものは根付いていると思うんです。特に篠山のような城下町は、昔からの暮らしが色濃く残っています。また、旧武家町や旧商家町の区画があり、暮らしぶりもそれぞれ異なっています。それらの違いなども含めて、街まるごと楽しんでいただきたいのです。街には、様々な側面がありますし、切り口によって見え方も異なります。歴史的な空間、街の醸し出す雰囲気を感じながら、まるでこの街で暮らしているような感覚で大切なひとときを過ごしていただきたい、そういう想いのもと城下町ホテルとさせていただいております。

古民家を改修するにあたって、心がけていることを教えてください。

新しいものに生まれ変わらせるのではなく、“一番輝いていた時代に戻す”。これを最優先に心がけています。宿泊施設といえば、一般的には快適性、利便性が優れており、それによりリフレッシュを提供できる場であるべきだと思います。しかし、ニッポニアはそうではありません。快適性、利便性を追求しすぎると、古民家を改修する意味合いが薄れてしまいます。ニッポニアでは、当時の暮らしぶり、例えば、扉が揺れる音、虫の鳴く声、風の音、朝になると隣のお寺の鐘の音が聞こえるといったようなことに触れることで、懐かしさを感じてもらいたいですし、それによりリフレッシュを提供できればと考えております。また、同時に地元の人が誇りに思えるような建物になってほしいのです。

オープンして1年が経ちましたが、いかがですか。

オープン当初の3ヶ月は、かなりばたばたしていましたが、現在ではだいぶ落ち着いてきましたね。ただ、やはり秋のこの時期は、週末は満室となっています。平日においても、2~3部屋は、常にご利用いただいているような状況です。

利用された方は、どのような反応をされていましたか?

「懐かしい空間が綺麗になってうれしい」「日本の暮らしや文化が詰まったお部屋に泊まれるなんて新鮮」など我々にとっても大変うれしいお言葉をいただけたりしましたが、オープン当初は「部屋が寒い」「段差が多い」などご不満をおっしゃる方も多かったですね。私どもは、古民家の良さを最大限に感じていただきたく、当時の一番輝いていた時期に戻すためのリノベーションを行いました。新たに快適性や利便性を追求した訳ではありません。先ほどもご説明させていただきましたとおり、当時の暮らしぶりに触れていただきたいのです。そのため、現在でも使用できるものは、極力使用するようにしています。そういったところで、お客様の期待と我々の提供しているものとの食い違いが生じていたのです。ただ、こういった正直なお声をいただけたことで、我々がどのような思いで、このお宿を提供し、お客様に何を感じていただきたいか、しっかりとお伝えすることが大切だと気づくことができました。現在では、みなさまにご理解いただけたようで、当初のようなお声をいただくことは少なくなりましたね。ご予約を承る際にも、必ずご説明させていただいております。テレビもあえて置いておりませんので、大晦日にお泊まりになる方には、紅白歌合戦の録画予約を事前にお薦めしています。(笑)

平松さんが思う篠山の魅力とは?

“人が温かい”これに尽きますね。地方と呼ばれているところは、どこもそうなのかもしれないのですが。街を歩いているだけでも、皆すれ違いざまに挨拶をします。篠山へきて、特に驚いたのが、見ず知らずの私に対して、学生が大きな声で挨拶をしてくるんです。最初は誰にむけて言っているのか分からなかったですね。(笑)そういった温かさに触れてほしいなと思うんです。街全体で子供を見守っていこうというのがヒシヒシと感じますし、その温かさに触れたときの心がほっこりと温かくなる感じ、それを是非感じていただきたいと思います。

今後の目標や今後に抱く思いをお聞かせください。

リノベーションした建物は、最終的には地元に返したいと思っています。地元の方たちで運営がなされるようになれば、雇用の創出にも繋がります。地方にある素晴らしい建物をリノベーションして生き返らせることで、雇用を生み、活性化に繋がり、その地域特有の良さも伝わりやすくなります。地方には、素晴らしいものがたくさんあるにもかかわらず、知られていないことが多いんです。まだまだ知られていない文化の素晴らしさ、価値をより多くの方に知っていただけるような場を再生・提供し、活性化に寄与し、紡ぐべき文化をしっかりと紡いでいきたいと思います。

(取材:平成28年10月)

※掲載している記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

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