
老舗酒造の若き4代目が造る日本酒で乾杯!

有限会社 長老 代表取締役
明治36年(1,903年)創業の酒蔵の杜氏
HP→http://www.chourou.co.jp
最初から杜氏になろうと思われていたのですか?
大学を卒業してから、2年ほど酒造りとは全く関係のないところで働いていました。というのも、スーツをバシッと着て働く仕事に憧れていたんです。ですが、ある時、父から「営業を手伝ってくれ」と言われたことがきっかけで、酒造りを手伝うことになりました。そこで、営業もしながら杜氏に付いて10年ほど勉強しました。ここは但馬杜氏と言われる人たちが代々杜氏をされていましたが、若いなり手がいないということで、前杜氏が引退するタイミングで私が引き継ぎました。最初の2~3年は寝る暇もありませんでした。そして今やっと、杜氏として独り立ちができて十数年が経ったところです。ここは大きな蔵元とは違って、杜氏と言いながらも、瓶詰めや、配達、帳面を付けたりもします。それが逆に小さな酒蔵ならではの強みだと思っています。米の入荷からラベルを貼って出荷するまで一貫して携わるので、商品の説明も間違いなくできますし、お客様の声を生で聞くことができます。


お酒の造り方を教えてください
原材料は、米・米麹・水でできています。
日本酒の中でも種類があって、吟醸酒・純米酒・普通酒に分かれます。それは、精米歩合や醸造用アルコールの配合率によって変わってきます。培養した酵母に、丹精込めて育てた麹・仕込水・蒸米を加えると発酵が始まります。その発酵を促すのが酵母と麹菌です。日本酒の特徴は、ビールやワインと違って、1つのタンクの中で2つの発酵が同時に行われていることです。麹の働きで酵母の栄養素を作り、その栄養素を酵母がエネルギーとして取り込むことによりアルコールを生み出します。この2つの発酵を同時に行っているため、バランスの良い発酵管理が大切になります。2つの発酵をいかに上手く促すかが杜氏の技術や経験にかかってきます。
吟醸酒のように、良い原材料を使って手間をかけて造ったお酒はおいしいに決まっています。でも、原材料を抑えて造った一般的なお酒は誰が造ってもおいしいものができるかといったら違います。手頃な値段のお酒をいかにおいしく造るかということに力を入れています。
お酒は一年中造られるのですか?
今は機械の発達によって一年中お酒を造ることもできますが、ここでは昔ながらの「寒造り」で、11月~3月に1年分のお酒を造っています。
お酒というのは徐々に熟成してきます。その年に造られた新酒はフレッシュで荒々しく、ヤンチャな感じですが、それが秋頃にかけて丸みを帯びてきます。夏を越えて秋口に熟成した状態を「秋上がり」と言います。当蔵は量産をしないので、新酒から熟成していく全ての過程を楽しんでいただけます。同じお酒を毎月買ってもらうと、毎月味が丸くなっていくのがわかります。





売れ筋商品と特徴は?
「丹」という商品が人気です。この商品は“京丹波100%”が特徴なんです。地元の米と水を使って、地元の杜氏が仕込んで、地元の者が販売する。そういうコンセプトを元に考え、5年ほど試行錯誤を重ねて、およそ3年前から発売しています。そのお酒は、地産地消の特産商品として販売しようと考えたので、通信販売を除き基本的には京丹波町外に出荷していません。
地元にこだわった理由
日本酒の消費は年々落ち込んでいます。多くの蔵元は、海外や、国内でも外へ外へと販路を拡大していこうとするんですが、当蔵は逆に内へ内へ囲んでいこうと思ったんです。それがこの商品を造ろうと思ったきっかけです。小さい酒蔵なので、全国に広げなくても、地元の人たちに美味しく飲んで頂ければいい。地元の人に愛されるお酒にしたいんです。
どこで手に入りますか?
酒蔵に併設されている直売所のほか、京丹波町内に4つある道の駅でも販売しています。期間限定のお酒は、早くから予約で売り切れてしまうこともあります。
酒造りで感じること
同じ農家さんから仕入れる米でも、多少品質にばらつきがあったりします。気候や温度も関係してきますし、質を見極めて、毎年均一な味のお酒を造ることに苦労します。ただ、苦労した分、無事に仕上がった時や「おいしい」と言ってもらえた時は嬉しいですね。手をかけて造る感じは子供を育てる感覚と似ているかもしれません。
京丹波町の魅力を教えてください
自然豊かなところです。水もおいしいし空気もキレイです。だからこそ、おいしいお酒もできるのです。
今後の展望や目標をお聞かせください
地元の人たちみんなに飲んで頂きたいです。これからも地元に愛されるお酒を造り続けます。
(取材:平成30年2月)

