「想い・こだわり」を最大限、カタチにする。

つみ木家具店
上田 大輔・亜紀さん    うえだ だいすけ・あきさん

【大輔さん】1975年 10月・大阪生まれ。1998年~2002年 近畿大学・芸術学科・空間建築設計コース卒業。工業デザイン、空間設計を学んだ上で、永く使ってもらえるものを生み出したい、また企画から製作の全てを自分で手がけたいと、木工の世界に飛び込む。
【亜紀さん】1980年 3月・滋賀生まれ。1998年~2000年 飛騨国際工芸学園・木工科卒業。木で何かをつくって生きることを決め、木工の世界に入る。 飛騨の山奥での二年間はひたすら家具をつくり続け、学ぶ。 なんでもつくることが好きな、食いしん坊。
つみ木家具店公式HP http://www.tsumiki.net/

「つみ木家具店」について教えてください。

つみ木家具店では、昔からごく当たり前に使われてきた天然の素材や木組みの技術にこだわっています。その“当たり前のこと”には無理がなく、何よりも一番理に適っているからです。構造において、ネジ・クギといった金具は使わず、全て木組みでつくります。金具を使わない家具というと、民芸品のような重たいテーブルを思い浮かべられるんですが、もう少し生活に寄り添ったものを、金具を使わずにつくりたかったんです。量産型の安い家具との違いをお客さんにも感じてほしいですね。はじめは、金具を使用せずにどこまで出来るか分からなかったんですが、やってみると意外と使わずに出来ました。ただ、つくっている中で、だんだんと「別に使ってもいいんじゃないか」という思いに駆られたりもするんですが、金具などを使った家具というのは、そういうものを使った形にしかならないんです。あえて使わないと決めたことで、自分たちとしての覚悟も決まるという部分もありますし、この方法でつくっています。

全て木組みとなるとかなりの精密さが必要になりますよね?

そうですね。ただ、そこは私たちの楽しみでもあります。師匠からは「お前はつくるのが好きやからいいかもしれんけど、お客さんは別に家具の構造がどうなってるかなんて、興味ないかもしれへんよ」と言われたりもしました。でも、逆に、そのつくっている過程もブログやホームページで紹介すれば、興味を持っていただけるんじゃないかとも思っています。

素材は何を使われているんですか。

外国産の広葉樹がほとんどですね。私たちのつくり出す細いデザインに耐えられるものとして、材料を選んでいるので、ヒノキやスギといった針葉樹では柔らかく難しいんです。一方で、針葉樹の軽さも魅力的だと思っています。柔らかく、軽く、耐久性に欠けますが、木も陶器と同じように割れるし、壊れます。木のお皿も落としたら、割れる。それでいいんです。だから、丁寧に扱う。何年も使える耐久性のある家具はもちろんつくれます。その反対で、丁寧に扱う必要がある家具というのもあっていいんじゃないかと。そう考えたときに、針葉樹を使った軽い家具っていうのも魅力なのかなと思います。

家具作りの道に進むきっかけは何かあったんですか?

完成度ですかね。建築は、たとえ自分が考えたものを建てられたとしても、おそらく考えの80%ぐらいをカタチに出来れば良い方だと思います。施主さんありきですし、様々な人が関わりますからね。そこで、家具の場合だと100%できると思ったんです。いや、木は変化するので99%くらいですかね。(笑)自分の想い、こだわりをカタチにできる、それが家具づくりの道に進んだ理由です。

京丹波町へ移住したきっかけを教えてください。

もともと大阪の住之江区で「家具工房つみ木」という家具店をオープンしました。2003年の夏頃ですね。だけど、大阪では、工場と当時住んでいた家を往復するだけの生活が続いていて、これがこの先もずっと続くのはどうなのかなっていう思いが、二人とも心のどこかにあったんだと思いますね。また、田舎暮らしがすごくしたかったわけではなく、ただ「自分たちの生活を見ていただけるような場所」を探していたんです。家具って、よくショールームに展示されていますよね。でも、そうではなくて、暮らしの中で使われているものを見てもらうのが、一番説得力があると思うんです。自分たちがつくったものを、自分たちの生活の中で使う。その上で人にすすめる。それが大事だと思うんです。

京丹波町へのこだわりは何かあったんですか?

実は、縁もゆかりもないんです。最初は、彼女(亜紀さん)の出身地の滋賀県で探していました。でも、なかなか見つからなくて、滋賀県以外も探しているうちに、この場所に出会いました。それまで京丹波町自体全然知らない場所でしたが、質美(しつみ)っていう地名が2人ともとても気に入ったんです。ものづくりをするのに、うってつけの地名じゃないですか?「ビューティフル(美)クオリティ(質)」。(笑)こんな場所じゃとても手が抜けないし、しっかりものづくりをしようという気持ちになりますよね。

 移住して辛かったことや変わったことはありますか?

あまり変わってないというのが本音ですね。ただ、1年目の寒さだけはこたえました。大阪で着ていた服は何の役にも立たなかったです。(笑)だけど、雪が降れば、犬と一緒に雪遊びもできるし、とてもいい場所やなっていう印象の方が強かったですね。つみ木家具店としては、大阪にいた時から、特には変わっていないですしね。だから、逆に大阪で家具店をしていて、移住してきたというと驚かれることが多いですね。この質美で始めたと思われているくらいなので、工房とぴったり合った場所に来られたんだなと思っています。生活環境自体も悪くないですよ。困ったこともほとんどないですし、コープもありますし、Amazonだって次の日には届きますしね。(笑)生活面では、不便を感じたことはないです。

京丹波町の魅力を教えてください。

田舎ならではの風景や景色なんかは、やはり素晴らしいですね。それから、地域の方々がみなさんとても接しやすい人が多いなと思います。私たちが問題なく移住し、新たな暮らしが出来ているのも、みなさんの受入れ方だったり、ほどよい距離感で接してくださったからかなと思いますね。いろんな出会いがありますし、その出会いによっていろんな経験をさせてくれます。その中で、私たち自身もやってみたいことや考えついたことをやってみたり、試していくといった感じで暮らしています。最終的に、この京丹波町・質美が私たちをどんな人間にしてくれるのか楽しみですね。

今後の展望やチャレンジしたいことなど目標をお聞かせください

とにかく、現在(いま)を楽しみながら、家具づくりや地域活動に取り組んでいけたらと思っています。みんなが楽しみながら、「ああ、ちょっと元気が出てきたね、質美」って思えるくらいが一番いいのかなと思いますね。こうやって取材なんかしてもらえると、代表みたいな感じで何かやっているように見えるかもしれないですけど、主役は私たちじゃないんです。私たちが自由にやれているのも、周りのみなさんのサポートがあってこそですし。ただただ、私たちはここに移住してきて、この質美の良さに触れて、来た時以上に、どんどん質美を好きになってきている、そんな質美がちょっとずつ、より元気になっていけばいいかなと思っています。

(平成30年8月取材)

※掲載している記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

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