黒谷和紙の伝統的技能の保全、
伝承が私の役割!

黒谷和紙協同組合 理事長
林 伸次さん    はやし しんじさん

綾部市出身。京都精華大学を卒業後、黒谷和紙協同組合の研修生となり、2年後に独立。制作活動の傍ら、京都伝統工芸大学校で後進の指導を行う。現・黒谷和紙協同組合理事長。

綾部 黒谷和紙公式サイト http://kurotaniwashi.jp/
Facebook(黒谷和紙の里)https://www.facebook.com/kurotaniwashi/?fref=ts

林理事長のご経歴を教えてください。

僕は、綾部市の山家(やまが)というところの出身です。3歳くらいまで山家で暮らしておりまして、その後は母方の実家のある京都市で、大学に入るまで暮らしていました。

京都精華大学に入られたんですよね。
もともと芸術がお好きだったんですか?

いえ、特にそんなことはなかったですね。高校生の時に、美術で油絵の授業があって、その際、先生に誘われたのがきっかけで美術部へ入部したんです。自然とふれあうのが、昔から好きで、それを絵にしよう!という思いがあったので、最初は風景画ばかり書いていました。その後、どっぷり芸術にはまって、精華大学美術学部洋画専攻に入学し、油絵を勉強していました。

なぜ和紙を?

大学卒業後、祖父が亡くなってから、祖母が1人で畑仕事を切り盛りしていたので、手伝うために、綾部に帰ってきました。それから百姓仕事をしていたんですが、冬場の職を見つけたくて、あれこれ探していたときに、研修制度を利用し、協同組合に入った人がいるっていう話を職安(公共職業安定所・ハローワーク)で聞いたんです。それで、私もやってみようということで、組合の研修生になりました。もう、それから、紙漉きばかりやっていますね。大好きです。(笑)

黒谷和紙の特徴を教えてください。

もともと和紙の原材料は少なく、純粋に作っていると同じものになりがちです。和紙の原材料は、楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)があるのですが、黒谷和紙は、この3種の原材料を全て使用することで、多様性を持たせています。楮が主ですが。また、和紙はどれもそうだといえばそうなんですが、中でも黒谷和紙は丈夫だと自負しています。古くから和傘に用いられてきたほど丈夫な紙で、生活用品としての可能性が高いんです。これ(黒谷和紙で作られたクッション)見てください。クッションまで作れちゃうんです。また、これは和紙の特徴ではないのですが、黒谷では他所からの研修生の受け入れも行っています。世襲のみに絞ってしまうと、いずれ黒谷和紙を作れる家が1軒しかないという事態になっていたかもしれません。1軒だけとなれば、行政の保護や市場の独占により、消失はしないでしょうが、一方で増えることもなくなるんです。この受け入れ体制のように、黒谷では、協調・協力を組織として実践しながら、伝統的な手漉きの技法を守り続けています。

手漉きは、やはり機械漉きに比べて
出来上がりが異なるのですか。

実は、機械より良い物ができるから、動力を使わず手漉きにこだわっているのではないんです。ただただ、昔から引き継がれてきたやり方を変えなかったというだけです。なぜ、変えなかったのか。それは、「手漉き」という作業が奥深く、魅力的で、皆その作業自体が好きだからです。

和紙と洋紙では何が違うのでしょうか。

決定的に違うのは、「植物のどの部分を使っているか」です。洋紙は木材、木質部分を使用します。要は木の幹の部分ですね。それに対して、和紙は木の皮の部分を使用します。

ということは、芯の部分は大量に余っちゃいますよね。

そうなんです。一昔前だと焚きつけ等に使用していたのですが、現在ではガスや電気を使用することが多くなり、中々活用できずに捨ててしまっているのが現状です。ですが、つい先月、京都府立大の細矢教授と京都市伏見区の印刷会社が、楮の木の芯部分を使った墨を開発したんです。このように、芯の部分のリサイクル方法については、現在様々な検討がなされているところです。

今後の目標をお聞かせください。

黒谷和紙を途絶えさせないためにも、新たな活動を試みることは大事だと思います。産業として発展させる試みも模索し、導入しながらも、私は、現在ある技術そのものをしっかり引き継いでいくことが、特に大事だと考えています。具体的には、和紙を作るうえで楮もみ、楮そろいという、楮の皮を白皮にして保管するまでの工程があり、現在その作業をしていただいている方っていうのは、高齢で且つ数人しかいません。その方々から、しっかりと作業を引き継いでおかなければ、工程部分にぽっかりと穴が開いてしまうんです。なくなってしまってからでは遅いんです。そうならないためにも、現在、職人さんにその工程作業を知ってもらうための研修を計画しています。また、楮もみ、楮そろいといった地味だけど下準備として重要な作業にこそPRが必要だとも考えていますし、職人さんの多くはそれを望んでいます。紙漉きだけでなく、工程全体を通しての伝統的な技能の保全、そして、伝承していくことが、僕の代の役割だと考えています。

(取材:平成28年8月)

※掲載している記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

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