各地の鬼が大集合!
鬼を活かしたまちづくり

日本の鬼の交流博物館 館長
塩見 行雄さん    しおみ ゆきおさん

京都府福知山市出身。昭和48年福知山市役所に入庁。長く福知山市史に携わり、城の管理や美術館の管理、教育委員会で公民館長・図書館長を歴任し平成20年退職。前館長の退職に伴い平成21年4月から鬼の交流博物館館長に着任。

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ここはどういう博物館ですか?

鬼をテーマにした博物館は全国的にも珍しく、ここと岩手県北上市にある「鬼の館」ぐらいしかありません。

元々、この地域は京都で1番大きな銅山・河守鉱山があって、700~1000人が働いてここで生活していたんですが、昭和44年3月に休山したことが原因で、当時働いていた人たちがいなくなって町が過疎地域になってしまったんです。そこで、過疎化した町に人をどう呼び込むかということを考えた時に、大江山には鬼伝説が残っているではないかということで、そこに着目して鬼をテーマにしたまちづくりを始めました。鬼の里づくりの第一段として大江山酒呑童子祭りを開催し(今年で36回目)、その後も鬼にこだわったイベントを連続して開催しました。そして、それら一連のイベントの成果をふまえて平成5年に鬼の交流博物館が開館しました。

どんな鬼伝説があるんですか?

大江山には3つの鬼退治伝説が残っています。一番古いのは、日本の国が成立したころ、陸耳御笠(くがみみのみかさ)という土蜘蛛が日子巫王(ひこいますのみこ・崇神天皇の弟に)退治された話(古事記、丹後風土記残缼)、2つめは聖徳太子の弟に当たる麻呂子親王が、三上ヶ嶽(大江山の古名)で英胡・軽足・土熊などを討った話、もう一つは、よく知られている酒呑童子(しゅてんどうじ)の話です。大江山の周辺には、「鬼の岩屋」「頼光の腰掛け岩」「酒呑童子屋敷跡」など、こうした伝説をとどめる遺跡がたくさん残っています。山頂すぐ近くの山あいには、なんと「酒呑童子の供養碑」もあります。

鬼とはどういう存在なのですか?

残念ながら鬼の存在を実証することはできませんが、鬼の存在は歴史的な一面を映しているのかもしれません。鬼は悪いことをしたから懲らしめられたわけではないのです。古事記や日本書紀に鬼という言葉が出てくるのであれば、何か歴史的な事実を鬼に仮託しているのかなと思います。分かりやすく言えば、大和朝廷に敵対していた部族たちが鬼と言われているのではないかと思うのです。麻呂子親王の時の鬼は仏教に対抗していた人たちを指しているのかもしれません。つまり、国家の転換期にそれに従わない人たちが「鬼」というレッテルを貼られたのではないでしょうか。平安時代には強盗がいたりして世情が不安定だったかもしれないので、そういった不安感みたいなものが酒呑童子という怖い存在を作り上げて物語にしたのだと思います。

あと、民俗芸能としての鬼というものもいますよね。たとえば節分の鬼や秋田県のなまはげがそうです。節分では「鬼は外、福は内」と言いますが、地方によっては「鬼は内」と言うところもあるのです。秋田県のなまはげは、山の神々の使いとして里に来訪し、厄払いをしたり悪さを忠告したりします。これらは神様に近い鬼ですよね。

このように鬼といっても様々なんです。鬼という存在は、何かモデルがあったのかもしれませんが、人間の作った物語と歴史とがごっちゃになっていて一言では語れないんです。

塩見館長が鬼に興味を持つようになったきっかけは何ですか?

田舎に住んでいる以上、民俗学は知っておいた方がいいとは思っていましたが、特別鬼に興味はなかったですね(笑)

鬼が好きとか嫌いとかではなくて、文化の中にある鬼的な部分や政治的な要素に関心はあります。

史実と民衆が作り上げたものが物語になって、その物語の中で作者(民衆)が何を言いたいのか、そして読み手がどう取るかということが興味深いです。人や世代によっても鬼の解釈が異なるでしょうし、きっとこれからも違った見方の新しい鬼の物語が出てくると思います。

そして、鬼の話は政治との結びつきが強いです。勝てば官軍、負ければ鬼なんですよ。大義名分がある方が勝ちなんです。伝説の中で鬼がこんな悪いことをしたのだと書かれていなくても、天皇の勅命を受けて鬼を退治すれば、それが大義名分なのです。

福知山の魅力を教えてください。

住んでいるとよく分からないんですけど、よそから帰ってきた時に“ほっこり”するという感覚はあります。それは、自分が小さい頃から育ってきた山や川や自然といった環境や、慣れ親しんだ言葉や地元の食べ物に魅力を感じているからなんだと思います。私にとってはやっぱりここが「ふるさと」なんですよ。学生時代は東京に出ていたので、戻って来た時はこんな田舎だったっけなーとも思いましたけどね(笑)あと、福知山は鉄道管理局がありましたし、昔から駅が立派なんです。現在の駅舎は、城下町らしさを盛り込んで、福知山踊りの踊り子が被る編み笠をイメージした防風スクリーンと、福知山城の白壁と黒い屋根を連想させるような外壁のデザインになっています。

今後の展望をお聞かせください。

たくさんの人に訪れてほしいです。まもなく25周年を迎えますが、もっとたくさんの人に知ってもらいたいんです。あと、鬼つながりの団体として、我々が事務局をしている世界鬼学会や、全国鬼サミットに加入している市町村、日本鬼師の会(鬼瓦を作っている人の団体)があるんですけど、そういった鬼を支える仲間を増やしたいと思っています。でもやはり一番は地元の人たちに認知してもらうことですね。もっと地元の理解を得たいと思っています。ここには大江山と3つの鬼伝説があり、地形的にも地元との結びつきが強いので、地元と連携していくことが重要です。私自身、地域に育ててもらってここまできたので恩返しをしないといけないなと思っています。福知山を知らない人でも大江山を知っている人はたくさんいます。「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立」と歌にも詠まれているように大江山というのは全国区なんです。大江山と言えば鬼伝説というイメージをもっと浸透させていきたいです。

(取材:平成29年9月)

※掲載している記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

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