地域の宝を伝承する
和知人形浄瑠璃

和知人形浄瑠璃会 会長
大田 喜好さん    おおた きよしさん

30歳から文楽を始め、45年の経歴を持つ。現在は「和知民芸保存会」の会長も務め、
人と人との出会いを大切にしながら和知文楽の継承に力を注いでいる。
*京丹波町観光協会 Web http://www.kyotamba.org

和知人形浄瑠璃の歴史

今から150年余り前の江戸時代末期。旧和知町のひっそりとした山村・大迫村(旧丹波国園部大迫村)で農家の閑散期に人形回しを嗜んでいたことが始まりと伝えられています。当時は「大迫人形」と呼ばれており、娯楽の少なかった農村では、浄瑠璃に合わせて演じる操り人形が地域の楽しみとされていました。
その後、大迫村の娯楽として親しまれた操り人形は、明治初期に芸団が結成され、大阪文楽に携わった熟練者が加わわることで本格的な活動を始めることになります。当時、京都府下に27座あった人形浄瑠璃は、時代の流れとともに衰退していきましたが、「大迫人形」は地道にその活動を継続し、所々の人形の頭(かしら)を譲り受けることで次第に発展を遂げました。

当初は人形だけで演劇していた「大迫人形」も、昭和に入り、大阪文楽から講師を招き指導を受けることで、「和知文楽」として確立していきます。戦後になると、娯楽文化の盛り上がりとともに、和知文楽は飛躍的な発展を遂げることになりました。その立役者となった人物が「安積治朗」氏。安積氏は、活動の発展と教育に力を注いだ人物で、人形浄瑠璃の指導のための「響声会」を結成しました。後継者の教育と積極的な公演を行い、後にその功績が讃えられ、京都府文化功労賞を受賞されました。当時の公演の功績は、京都府下だけにとどまらず、但馬や播磨、若狭地域までに及ぶ盛況ぶりをみせ、昭和30年代には400回を超えるほどでした。

昭和37年には「和知民芸保存会」を結成。多くの町民が会員となり、「和知人形浄瑠璃」の理解と継承に力を注ぐ体制を整え、「和知文楽」は昭和54年に和知町指定文化財になりました。さらに昭和60年には京都府無形民俗文化財として認定されるまでに至ったのです。そして、平成11年には地元の民謡に基づいた「長老越節義之誉(ちょうろうごえせつぎのほまれ)」を新作人形浄瑠璃として完成させました。大迫村という小さな農村から芽生えた人形遊びが、150年あまりの時を経て、貴重な文化として根付いたことに先人への尊敬と誇りを感じています。

和知の人形浄瑠璃とは

和知の誇る4大芸能(和知太鼓・人形浄瑠璃・文七踊り・小畑万歳)のひとつで、現在は文楽と呼ばれ、浄瑠璃に合わせて三人遣いの人形が操られる芸能です。「浄瑠璃」とは、三味線を伴奏にし、太夫(語り口)が人形のセリフやその様子を歌って(語って)表現するものです。

このように文楽とは「太夫(語り)」「三味線」「人形」の三つの調和を成しながら物語を進めていく「三業一体」の芸なのです。特に和知文楽の大きな特徴は、通常3人で操る人形をたった1人で操るということです。実は少子高齢化にともなう使い手の減少でやむを得ず1人で操っているのですが、今となってはこのスタイルが「和知文楽」として定着している状況です。

 

実際に人形を操られる大田さんにとって、
人形浄瑠璃の難しさとは?

先ほども申した通り、文楽は「三業一体」の芸なので、なによりもチームワークが大切になります。私自身、現在は人形遣いをしていますが、文楽を始めた頃はまずは「語り」の訓練からでした。「語り」は物語そのものなので、物語の全体を理解していないと人形の動きや表情を上手く作ることができません。それに、「語り」よりも動作が先にくることもしばしばあるので、自然な人形さばきをするには、「語り」を知り尽くしていないと難しいのです。

実際には1人で人形を操るのにも限界があり、主に左手を扱う要所ではサポートが必要ですし、女方の人形を操るにも、男性ながらに繊細な動きが難しかったりします。個々の技術だけでは、どうにもならないのが文楽の難しさであり、またそこが楽しさでもあると思っています。

人形はどのようなものなのですか?

人形浄瑠璃の人形は、いわば舞台役者です。特に魅力のひとつは頭(かしら)の素晴らしさにあります。頭は目・口・眉などが動く仕掛けになっていて、種類は役によって様々。鯨の髭で作られた糸を巧みに操り、喜怒哀楽といった人間の感情表現を作り出すのです。私たちの保有している人形の中には、阿波人形の名工と讃えられる「天狗屋久吉」作のものも多数あり、その精巧な造りと美しさはまさに芸術品です。現在は地元の土蔵で保管されていますが、昔は、頭の頭髪には本物の人の髪の毛を使っていたようで、劣化しやすく保管が非常に難しかったようです。

和知文楽の継承について

少子高齢化で継承が一番の悩みどころでしたが、現在は、和知小学校と和知中学校の選択科目として取り入れていただいています。地元の文化の素晴らしさを子どもたちに体感してもらおうと教育現場や保護者から大変な協力をいただき、本当にありがたいかぎりです。生徒たちも真剣に取り組んでくれていますし、なんといってもうれしいのが、卒業生から地元の女子高生が人形浄瑠璃保存会に参加してくれたことです。活動している女子高生は3人で、人形遣い1名と三味線が2名。三味線は爪や指の体質によって向き不向きがあり、誰にでもできるものではないので、貴重な仲間です。若い担い手たちの協力を得て、継承発展に努めていきたいと思います。

地元の道の駅「和(なごみ)」に併設されている伝統芸能常設館にて、月1回の定期公演を行っていますので、ぜひ一度ご覧ください。

(取材:平成26年2月)

※掲載している記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

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